建築家・有限会社西方設計主宰、西方里見先生。 “高断熱設計の先駆者”と称される第一人者が、「高性能な家を簡素につくる」哲学のもと、寒冷地で健康長寿を実現する住まいを追求してきました。主要材のグラスウール、今回採用のEarthwool®(アースウール)について語っていただきます。
Q: 西方設計の根幹であるコンセプト「高性能な家を簡素につくる」とは、どのような考え方に基づいていますか?
A: 私の長年のテーマであり、設計の土台です。単に高断熱・高気密化を徹底するだけでなく、設備や工法を極力シンプルにすることで、施工の精度を向上させ、コストを抑え、長期的なメンテナンス性を確保します。例えば、暖房は床下エアコン1台というような簡素な仕組みで家全体を快適にするための、建築物理に基づいた妥協のない躯体性能を追求しています。
Q: 断熱材の選定において、性能以上に重視される基準は何ですか?
A: 最も重視するのは「不燃材であること」、つまり防火性です。私が拠点を置く能代市は歴史的に火災が多く、建築家として燃えにくい家をつくる責任を感じています。石油系の断熱材は、延焼リスクや音の響きやすさから使用せず、安全性と性能を両立した不燃性の鉱物系グラスウール断熱材を優先的に採用します。
Q: 設計方法の屋根3層(充填・付加断熱20K)、壁2層(充填断熱20K、付加断熱20K) という多層断熱が、具体的にどのようなメリットをもたらすのでしょうか?
A: この多層で厚い断熱施工は、単に高断熱であるということだけでなく、複合的な効果を発揮します。
Q: Earthwoolを選定した最大の決め手は何でしたか?特に、従来のグラスウールと比べて評価された点は?
A: 最大の決め手は、Earthwool が植物由来のバインダー( 結合剤)を使用しているという点です。これは、私たちが長年目指してきた「人と環境に負荷の少ない家」に不可欠な要素です。従来のグラスウールは、バインダーに石油系のものが使われていたため、一部で「体に悪いのではないか」という懸念や誤解がありました。
Earthwoolは、この有害な化学物質の問題をクリアし、結合剤が植物由来であるため、人体への優しさと安全性の向上が確認できます。施主様の「エコな住宅」というご要望にも、リサイクルガラスを主原料とした鉱物性である点も含めて、自信を持って応えることができました。
Q: 高気密化が進む現代の住宅において、断熱材の「吸音性能」はなぜこれほど重要なのでしょうか?
A: 高断熱・高気密住宅は、外部の音を遮る一方、室内の音がこもりやすく、響きやすいという特性があります。石油系の断熱材は吸音性能が低いものが多く、採用すると、電話の音や話し声、生活音が不快なレベルで室内に響いてしまいます。
グラスウールは、その繊維構造から優れた吸音性能を持っています。私たちは、高気密化のデメリットである「音のこもり」を打ち消し、静かで快適な住環境を両立させるために、吸音材としてグラスウールがベストな選択肢だと設計時から明確に説明し、間仕切り壁への採用も含めて積極的に活用しています。
Q: 施工を担う大工さんからは、Earthwoolの施工性についてどのようなフィードバックがありましたか?
A: 大工さんからは、「チクチクしない、ソフトな手触りで非常に作業がしやすかった」という好意的なフィードバックがありました。断熱材の性能は、隙間なく正確に施工されることで初めて発揮されます。施工時の不快感が低減し、作業環境が良くなることは、丁寧で正確な断熱材の充填につながり、結果的に住宅全体の施工品質の向上に直結すると考えています。
Q: 人体への負荷が少ない建材として、今後、断熱材に期待する「進化」とは何でしょうか?
A: 今後、断熱材は省エネ等級への適合に必須な要素であり続けますが、それに加えて化学物質のさらなる低減と環境配慮が重要になります。Earthwoolの植物由来バインダーは、従来の素材のイメージを覆し、人体への優しさを追求した大きな一歩です。将来的には、Earthwoolのようなリサイクルや再生可能な原料の使用、そして製造から廃棄に至るライフサイクル全体(LCCO2)での環境負荷を最小限に抑える取り組みが、建材を選ぶ上での絶対的な基準となっていくでしょう。